イデコは20歳から60歳未満まで掛金の積み立てと運用を行っていく、公的年金の上乗せの制度ですね。
イデコに関連する記事で注目を集めているのは、
- 手数料
- 証券会社
- 節税効果
この3つがほとんどですが、肝心の60歳以降の『お金の受け取り方』についてはあまり触れられていないように感じます。
そこで、イデコを1番お得に受け取る方法を紹介します!
iDeCoの1番お得な受け取り方は?ポイントは『節税』です!
イデコの受け取り方には、
- 年金
- 一時金
- 年金と一時金の併用
この3種類の方法があります。
イデコの3つの受け取り方!
年金受け取り
*イデコの受取条件には前提として、国民年金の受給要件を満たしている必要があります。
年金で受け取る場合、雑所得として課税されることになり、『公的年金等控除の対象になります。』
受け取り時に発生する税金
雑所得とは、主たる収入以外の『諸々の所得』のことで、総合課税の対象となります。
国民年金や厚生年金、イデコの年金は『雑所得』という扱いになっています。
まず、公的年金とイデコの年金の合計額を算出し、下の表の(a)にあてはめます。
年金を受け取る人の年齢 | (a)公的年金等の収入金額の合計額 | (b)割合 | (c)控除額 |
---|---|---|---|
65歳未満 | (公的年金等の収入金額の合計額が700,000円までの場合は所得金額はゼロとなります。) | ||
700,001円から1,299,999円まで | 100% | 700,000円 | |
1,300,000円から4,099,999円まで | 75% | 375,000円 | |
4,100,000円から7,699,999円まで | 85% | 785,000円 | |
7,700,000円以上 | 95% | 1,555,000円 | |
65歳以上 | (公的年金等の収入金額の合計額が1,200,000円までの場合は、所得金額はゼロとなります。) | ||
1,200,001円から3,299,999円まで | 100% | 1,200,000円 | |
3,300,000円から4,099,999円まで | 75% | 375,000円 | |
4,100,000円から7,699,999円まで | 85% | 785,000円 | |
7,700,000円以上 | 95% | 1,555,000円 |
国民年金や厚生年金は基本的には65歳から給付が始まるので、それまでは公的年金等の合計額はイデコのみとなりますね。(企業型確定拠出年金や国民年金基金に加入している人は、それらの受取金額も加算する必要があります。)
例えば、60歳の時に公的年金等の合計受取額が年間で200万円だった場合は、
200万円×75%-37万5000円=112万5000円
この112万5000円が総合課税されることになり、最終的な所得税の計算に使われる金額(課税所得金額)になります。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
所得が、公的年金のみだった場合は、先ほどの
112万5000円×5%=5万6250円が所得税になります。
公的年金からの収入以外にも総合課税される所得があれば、それらを合計して、上の表にあてはめて最終的な『所得税』を計算します。
一時金受け取り
一時金受け取りは、積み立てたお金を一括で受け取る方法で、税制上は『退職所得』の扱いとなります。
退職所得は、雑所得のように総合課税されるのではなく、別の所得とは分離して税金を徴収されることになります。
退職所得も税金がかかる!
一時金で受け取る場合は『退職所得』として扱われ、退職所得控除の適用をうけることになります。
控除額の計算式は、加入期間により違い、
20年以下の場合は、40万円×加入年数
20年超の場合は、800万円+70万円×(加入年数ー20年)
となります。
これが退職控除額です。上記の計算式で出た控除額を使い、課税退職所得金額を求めます。
計算式は、
(収入金額ー退職控除額)×2分の1=課税退職所得金額になります。
課税退職所得金額を求めることができたら、
A課税退職所得金額 | 税率 | 控除額 |
1000円~194万9000円 | 5% | 0円 |
195万円~329万9000円 | 10% | 9万7500円 |
330万円~694万9000円 | 20% | 42万7500円 |
695万円~899万9000円 | 23% | 63万6000円 |
900万円~1799万9000円 | 33% | 153万6000円 |
1800万円~3999万9000円 | 40% | 279万6000円 |
4000万円以上 | 45% | 479万6000円 |
上記の表に当てはめて計算していきます。
計算式は、
課税退職所得金額×税率ー控除額です。
まずは、加入期間15年で、積立+運用の合計金額が800万円だった場合、
退職所得控除額は、
40万円×15年=600万円
800万円(収入金額)ー600万円(控除額)の2分の1=100万円
100万円が課税退職所得金額になります。
100万円の税率は5%で控除額はないので、5万円が税金として徴収される金額になります。
では、加入期間が30年で、積み立てと運用の合計金額が1600万円だった場合で計算してみましょう。
まずは退職所得控除額を求めます。
800万円+70万×(30年ー20年)=1500万円
1600万円ー1500万円の2分の1=50万円
50万円の税率は5%なので、2万5000円が税金として徴収されることになります。
一時金で受け取る場合は、税金0円になる可能性も
退職所得控除額は、加入年数が多いほど控除額が増えていきます。
30年、イデコに加入した場合は控除額が1500万円になりますね。ということは、イデコで受け取る金額が1500万円以下の場合は、税金0円で受け取ることができるんです。
1500万円という金額は、毎月どれくらいの積立額と利回りになるかというと、
長い期間にわたり安定した利回りを達成することを目標として考えた場合、現実的で達成可能な利回りは2%ほどと考えられます。
この点を考慮して、1500万円を受け取るためには、毎月3万円の積み立てを30年、利回り2%で、1478万1762円となり、約1500万円になります。
つまり、毎月3万円を積み立て運用していっても、一時金で受け取る場合は、非課税で受け取ることができるんです。
1番お得な受け取り方は?
イデコに長期間加入していた場合、退職所得控除額が非常に大きくなり、税金0円もしくは、少ない税金で受け取ることができます。
しかし、年金受け取りの場合は、イデコと国民年金、厚生年金の『年金合計額』を考えると、税金0円で年金を受け取ることは、まず不可能といえます。
また、所得税の税率は『累進課税』といって、所得が大きければ大きいほど、税率も高くなっていきます。
公的年金に、イデコの年金がプラスされることにより、所得税の税率がワンランク上の税率になってしまうと、大きな損になってしまうこともあります。
イデコを年金で受け取るときには、自分の公的年金の受給額を考慮して、計算しないとムダに税金を支払うことになります。
どちらが『お得か?』と聞かれると、その人の状況によるところがありますが、ほとんどの場合で『一時金』で受け取ったほうが税制上はお得になります。
勤め先から退職金が出る場合は注意
イデコの一時金受け取る年度と、勤め先から退職金を受け取る年度が同じになる場合は注意が必要です。
この2つは、合計して計算されることになるので、合計金額によっては税金が高くなってしまう可能性があります。
例えば、イデコに25年加入、会社で30年勤務していた場合に、退職所得控除金額を計算するときに使われる年数は多いほうの30年になります。
30年の勤続年数(加入期間)の場合の控除額は1500万円でしたね。
仮に、退職金が2000万円、イデコの一時金が1000万円の場合、合計所得は3000万円になり、課税退職所得金額は差額の2分の1なので750万円になります。
750万円のときに支払う税額は、108万9000円にもなってしまいます。
一方で、退職金とイデコの一時金の取得年度が1年でもずれていたら、
退職金の税額は、15万2500円になりますね。
ただし、忘れてはいけないのが、同年とその前年14年以内に退職一時金を受け取った場合、加入期間が重複している年数を差し引くというルールです。
ということで、イデコでは、退職所得控除の適用を受けることができません。
計算するとイデコの税額は、57万2500円になります。
合計の税額は72万5000円になり、同じ年度に受け取る場合と比べると、約36万円の節税になります。
退職金を受け取るときは、受け取る年度と、イデコの一時金の年度に十分に注意をしましょう。
イデコの受け取り方で大事なことは?
一時金で受け取った方が税制上はお得になる場合がほとんどですが、勤め先からの退職金、企業型確定拠出年金や国民年金基金などの制度にも加入している場合は、きちんと税金を計算しなければ、理想の受け取り方は判断できません。
重要なのは、それぞれの受け取り方による税金の仕組みを理解して、自分で計算するようになることです。
場合によっては、イデコを64歳までは年金で受け取り、65歳で一時金で受け取るといった方法が理想的な受け取り方になるかもしれません。
人によって、理想の受け取り方が違ってくるので、まずは計算方法と仕組みを理解することから始めましょう。
まとめ
イデコでは、年金と一時金という2つの受け取り方がありますね。
それぞれの受け取り方で、税額の計算方法がちがいますし、慣れない間は計算式も複雑に感じてしまいます
まずは、イデコに関する税金の仕組みをしっかりと理解し、それから理想の受け取り方を考えていくようにしましょう。
また、イデコの受け取り方は、始めは年金、数年後に一時金というように柔軟に変更することができます。